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「【解説】犀(さい)」

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 「涅槃図」では頭に角が生え、背に甲羅をまとう姿で描かれることが多い。日本には存在しない動物であることから、想像によって霊獣化した姿で描かれている。
 なお、日本には漢訳として伝わらなかったが、スリランカなどの南方上座部仏教圏に伝わる最古層の経典に『スッタニパータ(経集)』がある。そこには、釈尊の高弟たちが諸国を行脚して法を説き広めるにあたり、釈尊が弟子たちに対して、「犀の角のようにただ独り歩め」と繰り返し繰り返し説いている箇所があり、よく知られている。アフリカの犀は二つの角をもつが、インドの犀は角が一つ。そして犀は驀直に猛進する。何にも寄らず、脇目も振らず、ただ仏法と自己とを依り所として進めという釈尊の導きが、臨場感をもって伝わってくる。

《法話》犀……豊岳 慈明(岡山・豊昌寺住職)