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「【解説】耆婆(ぎば)」

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 サンスクリットではジーヴァカ。耆婆伽、耆城、時縛迦などとも音写され、命、固活、更活、能活と意訳される。「いのちある者」の意である。
 実際に居た王舎城の良医で、釈尊の主治医。耆婆大臣とも称される。
 耆婆は、生まれたときは針筒と薬嚢を持っていたと伝えられる。西北インド、現在のパキスタンに位置する徳叉尸羅(タクシャシーラ・タキシラ)国へ留学し、ピンガラという医師に七年間師事して当時の進んだ医術を修めた。その後、マガダ国の王舎城へ戻り、医師として活躍。歴史に残る名医であり、医師の祖とも言われ、また長寿の神として崇められている。現在に言う小児科医が専門であったようであるが、成人の頭部外科手術も手掛けて成功していることが伝えられている。仏典にも、嫉妬した提婆達多により釈尊目がけて落された岩によって釈尊が負傷したときも、耆婆が治療に当たっていることが記されている。
 耆婆は、マガダ国のビンビサーラ王の子であるが、遊女との間に生まれた子であったため、正室の子である二歳年下の異母弟・阿闍世(アジャータシャトル)が王位に就き、自らは医師の道を貫いた。のちに仏法に帰依することを阿闍世王に薦めたのは耆婆である。 南伝仏教の伝承では、王舎城の遊女の子であったが、生まれてすぐに捨てられたところ、無畏王子に拾われ、「まだ生きている」と言ったことから、ジーヴァカ(命あるもの)と名づけられたという。

土居 祐人(花園大学学生)

《法話》「耆婆(ぎば)」……華山 泰玄(岡山・少林寺住職)