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「【解説】猫」

 「涅槃図」には、釈尊の入滅に際して参集してきた多くの人物たちとともに、たくさんの動物たちも描かれている。しかし、猫が描かれていないことが多い。その理由として、猫には仏教に対する信仰心が無かったため、その結果お釈迦様に嫌われたため、摩耶夫人が天上から投げ降ろした薬袋が木に引っかかり、それを取ろうとした鼠を邪魔したため、などと様々な説がある。
 しかし、そもそも、かなり早い時期に描かれた涅槃図には、動物はほとんど描かれていなかった。高野山に伝わる「涅槃図」には唐獅子が一匹描かれているのみのものもある。それが徐々に多くの動物が描かれるようになった。やがて江戸時代後半になると、猫が描かれている「涅槃図」も出現するようになる。仏陀の慈悲はあらゆる生き物に降り注いでおり、生きとし生けるものもまた、釈尊の涅槃を嘆くとともに、釈尊の教えを頂いて生きていくことの有り難さを噛みしめるのである。

炭竃 陽平(花園大学学生)