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「〔法話〕最上の幸せ「涅槃」」

健康(すこやか)なるは、最大の恵み
 足るを知るは、最高の富
 信頼は、最強の絆
 涅槃こそ、最上の幸せなり
 迦葉尊者がお釈迦さまにたずねました。
 「涅槃とはどういうことでしょうか」お釈迦さまは答えられました。
 「涅槃は、心の傷のないことです。たとえば毒矢に射られた人が良医のおかげで、癒えるように、貪り、瞋(いか)り、愚かさの三毒の傷を“おしえ”によって傷のない状態にする。これが涅槃です。涅槃とは煩悩(わずらい)からの解放です。」
 インドの詩人タゴールは、東洋人最初のノーベル賞受賞者です。氏は四十代で最愛の夫人を、愛娘を、尊敬する父を次々に失い、国は戦場となりました。人生の苦悩を重ねて味わいますが、信仰心が詩(うた)にうかがえます。
 「日毎御身(ひごとおんみ)は私の願いを次々と拒むことでこの身を、その贈り物を受けるのにふさわしいものにしてくれる。浅はかな漠然とした欲望の危険から、私を救いながら」
 「お釈迦さまの教えは、涅槃です。平安の境地を最高の目的としています。その道は、単に悪い考えや行いを否定するのではなく、愛にたいする一切の限界を除去することです。」
 尊敬するお釈迦さまの“おしえ”を、ひたすら生きる支えとされました。
 苦しみ、悲しみを体験されている方は、他人の痛みがわかり感性が豊かです。
 他者への思いやりは、自身の心を清めます。
 お釈迦さまは、ハバの街でチュンダから食事の供養を受け、お腹をこわされました。
 苦しみながらも、感謝して、親しく語りかけ、いたわり、慰め、いのち尽きるまで導かれました。無条件で他人に尽くす限りない愛を示しながら。
 二月十五日は、お釈迦さまのご命日、涅槃会です。人生最上の幸せを思う日です。

(参照)法句経、涅槃経、タゴール詩集、遊行経、文殊師利問経

横山 博一(静岡・東光寺住職)