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「【解説】阿泥樓駄(あぬるだ)」

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 釈尊が横たわる宝床の手前で悲しみのあまりに気を失って倒れた阿難尊者を介抱しているのが阿泥樓駄である。阿泥樓駄は、釈迦十大弟子のひとりであり、「涅槃図」の上方で雲に乗った摩耶夫人を先導している阿那律尊者とは同一人物である。このように時間的に異なる二つの場面を一つの画の上に同時に描く手法を「異時同図法」という。二つの名は、インド人の名前である「アヌルッダ」という発音を漢字で表す際の標記の違いにすぎないが、習慣として、阿難尊者を介抱している阿那律尊者は、阿泥樓駄尊者と標記する。(※阿那律の項を参照)  釈尊の入滅に際し、阿泥樓駄尊者は「大覚世尊、已(すで)に涅槃に入りたまえり」と告げた。これを聞いた阿難尊者は悲しみのあまりに気を失い、倒れてしまった。阿泥樓駄尊者は清冷なる水を阿難の顔に注いで扶け起こし、次のように言った。「阿難よ、たとえ仏が涅槃されても、この上ない御仏の教えはこの世にとどまって、ひとびとの依り所となるであろう。わたしたちは精進して、御釈迦様が遺されたこの上ないみ教えを人々に伝え、衆生を救い、如来の恩に報いようではないか」と。これによって、阿難尊者はようやく正気に戻ることができたという(『大般涅槃経後分』)。

圓 祥宏(花園大学学生)

《法話》「阿那律尊者(アヌルダ)」……松岡 宗鶴(佐賀・松山寺住職)