栞いろは歌  禅のことをもっと…

遠山無限碧層々(えんざんかぎりなきへきそうそう)

臨黄ネット栞「ゑ」 遠山無限碧層々(えんざんかぎりなきへきそうそう)

「山また山、山の彼方にまた山が連なって、限りなく緑の山が続いておる。そういう風景に無心に対して、天地と我と一枚になった、天地と我と溶け合った心境である。人生を振り返ってみると、思うこと一杯であるが、その思うことも忘れて、限りなく続いておる山脈の中に溶け込んで、我を忘れた心境だ。……そこにはもはや、善もなければ悪もない。恨みもなければ誇りもない。悲しみもなければ喜びもない。そういう心境が末後の心境か。「打することは即ち打するに任す。要且つ祖師西来意無し」という心境か。と、そこに尻を据え、安住してしまえば、またそこが黒暗の鬼窟に落ち込んだというものであろう。そこにも尻を据えなさんナ。

《原典・碧巌録/引用・山田無文著『無文全集』第二巻「碧巌録」(禅文化研究所)より》

写真 宇治市/黄檗山萬福寺 布袋和尚像