栞いろは歌  禅のことをもっと…

庭前柏樹子(ていぜんのはくじゅし)

臨黄ネット栞「て」 庭前柏樹子(ていぜんのはくじゅし)

「如何なるか是れ祖師西来意」と問われた趙州和尚が答えた言葉。趙州の住まう観音院の庭にはたくさんの柏槇の老樹が茂っておったに違いない。「庭さきの柏の木じゃ」。……柏樹にはもちろん意識はない。大きくなろうとか、花を開いて実を結ぼうとか、涼しい木蔭を作って人々を休ませてやろうなどという意志は毛頭ない。無心にして花を咲かせ、無心にして実を結び、無心にして涼しい木蔭を作って人々を憩わせておるにすぎない。達磨大師はちょうど庭先の柏の老木のようなものだな。意志があるようで毛頭ない。ないようで大いにある。

《原典・無門関/引用・山田無文著『無文全集』第五巻「無門関」(禅文化研究所)より》

写真 鎌倉/円覚寺 鎌倉市天然記念物の柏槇