栞いろは歌  禅のことをもっと…

一滴潤乾坤(いってきけんこんをうるおす)

臨黄ネット栞「ゐ」 一滴潤乾坤(いってきけんこんをうるおす)

もし一滴の水もなくなってしまったならば? 考えただけで恐ろしくなります。一滴の水がよく大地を潤し、樹木草花を育み、緑に輝く地球を作りあげます。もちろん理屈からいえば、「一滴の水から」と不思議かも知れません。禅では絶対的見地から、大小、長短、広狭の区別を超えて、一滴の水でも大海の水と同じであり、一粒の米でも万岳の大きさに匹敵するというのです。一滴、乾坤を潤す。一滴の水に、一粒の米に絶大の価値を見出し、そのところにもったいないと思う心を学ばなければ、この句に参じたとはいえません。

《原典・碧巌録/引用・細川景一著『枯木再び花を生ず』(禅文化研究所)より》

写真 雨にぬれる新緑のもみじ