「著」は助詞で、意味がありません。何もかも捨ててしまえ。「所得無きを以ての故に」と『般若心経』には書いてあるが、心のことだから、物はないかもしれん。手に入れたものもないかもしれん、お金もないかもしれん、着る物もないかもしれん、景色もないかもしれん。しかし、何もないというその心が残ったらいかん。それも捨てよ、般若の智慧によって何を得たかと言えば、得たものは何もない。本来生まれたままのきれいな心がわかっただけで、何もないというその心を捨てなされ。
《原典・毒語心経/引用・山田無文著『無文全集』第十巻「毒語心経」(禅文化研究所)より》
*写真 京都/龍安寺・石庭 日天掃除