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一無位真人(いちむいのしんにん)
臨黄ネット栞「い」 一無位真人(いちむいのしんにん)

 赤肉団上に一無位の真人有り――赤肉団はお互いの肉体のことだ。切れば血の出る、このクソ袋のことだ。朝から晩までブラ下げておるこのクソ袋の中に、一無位の真人有りだ。何とも相場のつけようのない、価値判断のつけようのない、一人のまことの人間、真人がおる。仏がある。一人ずつおるのじゃ。皆の体の中に一人一人、無位の真人という、修行したこともなければ、修行する必要もない真人が一人おる。陸軍大将でもなければ上等兵でもない。正一位でもなければ従五位でもない。そんな階級はない。社長でもなければ社員でもない。位のつけようがない。男でもなければ女でもない。年寄りでもなければ若くもない。金持ちでもなければ貧乏でもない。偉くもなければ馬鹿でもない。世間の価値判断で何とも価値を決めることのできん、霊性というものがある。主人公というものがある。仏性というものがある。正法眼蔵というものがある。本来の面目というものがある。
 肉体的には肥えた人もあればやせた人もある。金持ちの家に生まれたのもおれば貧乏な家に生まれたのもおる。学校を出たとか出んとか、履歴がついておる。 この肉体の中にそういうことを一切離れた、無修無証、修行することもい らんが、悟りを開くこともいらん、生まれたまま、そのままで結構じゃという 立派な主体性があるのじゃ。

《原典・臨済録/引用・山田無文著『臨済録』(禅文化研究所)より》

写真 京都/建仁寺僧堂・托鉢 

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