法 話

落花流水を送る
書き下ろし

神奈川県 ・東学寺住職  笠龍桂

 人間関係にも落花と流水の関係が理想的ではないでしょうか

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 何年か前に、「お寺さんは広くて、電気の消費も大変でしょう。私どもの器具を取り付ければ、3割は電気代の節約になりますよ。」という電話がかかってきました。まあ、親切な案内と感謝し、検討してみますとその時は電話を切りました。そして数日後、テレビで実際はほとんど電気代の安くならない、ニセの器具を売り付けるサギにご注意と言うニュースが流れて、ビックリ仰天。危うくサギに引っ掛かるところでした。こう言うのを「小さな親切、大きな下心」と言うのでしょうか。とかくこの世は、頼みもしないものを売りつけたり、余計なおせっかいや、ゴリ押しが横行しています。その度に、人間関係は嫌なものだと思ってしまいます。
 「落花流水を送る」。花びらが川に舞い落ちると、流水がどこかに運んで行くという意味です。花びらは自然に散り、川もまた自然に流れているだけです。だから、この関係は美しいのです。花びらも流水も無心に自分の与えられた仕事をまっとうしているだけ。こんな関係を、人間にも求めたいものです。たとえ、それが商談であったり、仕事の依頼であってもです。
 家が壊れたら大工さんへ、魚が欲しければ魚屋さんへ、肉が欲しければ肉屋さんへ、坐禅がしたければ禅寺へです。何の思惑も下心もありません。お互いがお互いを生かし、生かされている関係は、花びらが川面を流れているごとく美しいものです。